地球座
あした天気になぁれ 1









これは昨日でも、明日でもない今日の物語




 ルルーシュの、胸の突起を強く吸い上げる。真っ赤に貼れて立ち上がった様は、いっそ痛々しくもあったが、それがまた逆にスザクの興奮を煽っていた。
「ぃたぁっ…!やめろ…っ…しつこいぞっ!」
「そんなこと言って…本当は胸を攻められるのが好きなくせに」
 眦に薄っすらと涙をためて、自分の上に覆いかぶさる男を突き放す腕にも、もうこれっぽっちも力など入っていなかった。
 スザクは未発達な女性の胸のように熟れたルルーシュの乳首を、もう一度口に含む。すると押さえつけるように抱いていたその肩が、ビクリと震えるのが掌から伝わってきた。
「あっ…!」  器用な舌を使ってその突起を丹念に舐めてやると、ルルーシュの濡れた唇からは溜息とも悲鳴ともつかない細く甘い声が漏れるのだ。
「ねぇ、気持ちいい?」
「やぁっ…喋るなっ…!」
 口では愛撫しきれないもう一方の乳首を指先で優しく転がしながら、スザクは上目遣いにルルーシュを見詰めた。言葉を発するときの空気の感触ですら、虐められて敏感な性感帯と化した乳首には痺れるほどの快感だった。
「…答えてよ。僕は気持ちいのかってきいてるよね?」
「ひぃ痛ぅ…!気持ちいいっ…気持ち…いいからっ!」
 優しく撫でるように愛撫していた乳首に突然爪を立ててやると、ルルーシュは一層高い声で啼いた。
 満足のいく質問の答えを得て、納得した様子のスザクは、にっこりと微笑むと涙ぐみその紫電の瞳にそっと唇を落とす。
「よかった…嬉しいよルルーシュ。僕はきみのことが大好きだから、きみのことをいっぱい気持ちよくしてあげたいんだもの」
 そう言って、スザクは掠めるような手つきで、立ち上がったルルーシュのペニスに触れた。そこは執拗な胸への愛撫で、すっかり硬く起き上がり、透明な液体でしとどに濡れそぼっていた。
「…あっ」
「あぁ、よかった。本当に、気持ちいいみたいだね」
「んっ…ぁあ…」
 すっかり滑りのよくなった竿を、無骨な掌で優しく上下にそっとしごく。先程乳首を攻めたときの瞬間の凶暴性も乱暴な顔も、その仕草の何処にも見当たりはしない。
 ルルーシュは、恥ずかしそうに両足を閉じようとしたが、スザクの静かな妨害によってそれは敵うことはなかった。
「今更、どうしたのルルーシュ?きみはそんなに緊張しなくていいんだよ。肩の力を抜いて」
「…っ…いいっ!もう、やめろ…自分で処理くらいできるから…っ!」
「いいから、僕に任せて。すぐに気持ちよくしてあげるから」
 体を捻り、顔を背けて微かな抵抗の意思を見せるものの、スザクにそれが通じる様子もない。
 そうしている間にも、快感だけを煽るように強弱をつけて揉みしだかれたそこからは、止め処なくいやらしい粘液が溢れだしてくるのだ。
「…はぁ…あっ…もう…っあ」
 熱を帯びた吐息がルルーシュの赤く色づいた唇から漏れていく。時折声を堪えようときつく噛締めるために、そこはすっかり濃い血の色を滲ませていた。
「…そう…大分気持ちよくなってきたみたいだね…でも、ルルーシュはこうされると、もっと悦いんでしょ?」
「あっ!ヤメッ!!…そこはっ!!」
 すっかりルルーシュの淫液で濡れたスザクの指は、つぅっと滑るように睾丸の下を辿って、まだひっそりと口を閉ざした秘所の入り口を撫でた。
「さぁ、力を抜いて」
「あっっ!!」
 ルルーシュが嫌だ嫌だと首を激しく横に振るのを、視界の隅で見とどけながら、スザクは自身の日に焼けた指先をツプンと先端だけ、其処へ挿入した。
 ルルーシュ自身の先走りで滑りを帯びていたそれは、一度先端が飲み込まれると、ほんの少しの力で難なく根元までアナルの中へと収まる。
「ふっ…あぁ…っ!」
「いつも思うけど、本当にすごいよね、きみの中って。熱くて、ヒクヒクしてて…」
「スザク…ッ!…っ変なこと…言うな…っ!」
 しかし、そんなルルーシュの抗議めいた台詞も、根元まで加えられた太い指をくいっと軽く折り曲げることで、すぐに溶けるように消えてしまう。
 スザクは狭い中を広げるように、浅く抜き差ししながらぐるぐると指を回していく。その度にルルーシュからは、痛みなど微塵も感じさせない甘い悲鳴が上がるのだ。
「ルルーシュは、三本くらいが一番好きだよね。もうちょっと、我慢してみようか?」
 ルルーシュのペニスが、快感に震え始めているのを目ざとく見つけたスザクは、アナルを弄っていない方の手で素早くその根元を握り締めた。それと同時に、少しほぐれた肛門にも、もう一本指を増やす。
「痛っ!…やめっ…!」
「少しくらい我慢した方が、イったときもっと気持ちいいでしょ?」
 スザクは、悲しそうな、けれど情欲に塗れた紫の瞳で縋るように自分を見詰めてくる幼馴染に、にっこりと人の良さそうな笑みを向けた。それは、首の上だけ見ればまさかその両手で男の股間を戒め、肛門を指でかき回してるようには、到底見えない笑顔だった。
 そう、スザクはそれほど涼しげなのだ。
 それが余計に、ルルーシュの恥辱を煽る。自分は洋服を剥ぎ取られ、シャツ一枚を辛うじて両腕に引っ掛けているような姿で、勝手に性感を高められている。にも関わらず自分を煽っている当の本人であるスザクは、いつもと代わらぬ笑顔で、ボタンのひとつも乱さずにルルーシュを見下ろしているのだ。
 こんな屈辱は、ない。
 脳の端でそう冷静に感じた瞬間、戒められている自分のペニスに鋭い痛みが走った。ドクンと、一気に其処に血液が集中してしまったのだ。
「うわっ…どうしたの、急に?出せないと思ったら余計イきたくなっちゃった?」
 勿論ルルーシュのペニスを掴んでいたスザクにもその血の流れが伝わって、彼は困ったように面白がるように眉を寄せると、そんな事を言った。
「…違っ…!!」
「そう?ルルーシュの違うは、肯定の意味だからなぁ」
 勝手にわかった風な口をきくなとなんとか抗議しようとしたが、その瞬間先程からかき回されていたアナルに新たな一本の指が侵入してきて、そんなルルーシュの言葉を根こそぎ奪っていく。
「ひゃぁ…っ!」
「ははっ…これで漸くお待ちかねの三本だよ!」
 ルルーシュの中で好き勝手に動き回る骨ばった三本の指が、悪戯に肉壁を引っ掻く。その度に引きつったような甲高い声をあげて、ルルーシュは弓なりに背を逸らした。
「っ…ぁあっ!…そこ…っ!…ひゃぁ…」
「そう…ここだよね、ルルーシュの好きなところは。此処を爪で引っ掻くと、ルルーシュは気持ちよすぎて少し変になっちゃうもんね」
 スザクは、奥の前立腺に当たる部分に、爪を立てる。
「ひぃっ!!痛っ!!…スザッ…頼むっ!!」
 何度も其処を刺激され、にも関わらず肝心の快感は塞き止められたペニスの中でのたうつ様に暴れまわっている。
 ルルーシュは苦しみすら伴うような欲求に耐えるように、自らの白い指を噛み、上目遣いでスザクに許しを請う。
「ルルーシュ、お願い。どうして欲しいか言ってみて」
「…ぇ…ぁ…っ…」
 油断すると飛んでしまいそうな理性を必死でかき集めながら、ルルーシュは戸惑った表情で指を噛む力を増した。
しかし、その合間にも前立腺を中心に、ルルーシュのアナルを激しく攻め立てるスザクの三本の指が休まることはない。気がつけばルルーシュのペニスは、先程よりも臭いの増した淫液でテラテラといやらしく光を反射して、それを握り締めるスザクの手すらも同罪とばかりに卑猥に染め上げていた。
「言って、ルルーシュ」
「…っ…挿入して…くれ…っ!頼む!スザク、お前ので…っ!」
 ルルーシュは耳まで真っ赤に染まった顔で、けれどしっかりとした口調でスザクへとそう言葉を紡いだ。
 しかし、当のスザクはと言うと、そんなルルーシュの答えに困ったように首をかしげる。
「…何言ってるんだよルルーシュ。そんなことできるわけないだろ?大事なきみに、痛い思いなんてさせたくないもの。…きみは、ただ気持ちよく達してくれればいいんだよ?」
 その瞬間、ルルーシュの表情が氷のように強張った。しかしその紫電の瞳には、あぁやはりなという諦めの色も、間違いなく滲んでいた。
「…スザ…ッ…ク!…違う…っ!俺は…っ!」
「さぁ、本当はあんまりきみを虐めたくないんだよ。もう、イっていいからね?」
 そう言うと、何か言いたげに瞳を見開いたルルーシュの言葉を遮って、スザクは握っていたその色の薄いペニスから手を離した。同時に、ルルーシュのアナルを弄っていた三本の指で、引っ掻くようにして前立腺を刺激した。
「あっ!!あぁぁあぁっーーーーっ!!!!」
 突然の戒めの解放に、心の準備のできていなかったルルーシュは、無防備なまでにその喉から快感の叫びを上げ、大量の精をペニスから吐き出した。勢い欲噴出した精液はなかなか止まず、数度のわかれてその小さな割れ目から噴射される。
「ほら、我慢していた方が気持ちよかっただろ?」
 アナルの中に侵入させたままだった自分の指を、強く締め付けながら達したルルーシュに、スザクは達成感に満ちた声でそう語りかける。柔らかな肉壁に締め付けられ、すっかり指先のふやけたそれを一気に引き抜くと、ルルーシュの唇からは自然と甘い声が漏れる。
「んぁ…はぁ……ぁ…」
 長い射精の後、すっかり放心状態になったルルーシュは、弛緩した手足を投げ出したまま動かなくなる。ただ上下する胸と荒い呼吸だけが、それが生命体であることを証明しているようだった。
「どうルルーシュ?その様子だと今夜もちゃんと気持ちよくなってくれたみたいだね?」
 スザクは上からその惚けた表情を覗き込むと、暗く淀んでいたアメジストが、ゆっくりとそのエメラルドへと焦点をを合わすべく光を取り戻す。
「…………スザ…ク…」
「?どうしたの?ルルーシュ?」
 見るからに力の入らないだろう右腕を、ゆっくりと精一杯伸ばしながら、ルルーシュは擦れた声でスザクの名を呼んだ。
 スザクは宙に浮くその手を、取るでも無しに愛おしそうに撫でながら、不思議そうに相手の名前を呼び返す。
「スザク…今度は俺が…お前を…」
 ルルーシュは、震える声でそう言うと、ゆっくりと億劫そうに体を動かし、スザクのベルトへと手を伸ばした。
 しかし、ルルーシュのしようとしていた行為は、その途中であっさりと、スザク自身によって遮られてしまう。
「いいよ、そんなこと。僕はただきみを気持ちよくしてあげたかっただけなんだから」
 見返りなんか望んでいないと言わんばかりの強い瞳を前にして、ルルーシュは悲しげに瞳を揺らすと、食い下がるでもなく止められたその手を引いた。
 スザクは、触れたルルーシュの細く白い指先が、微かに震えていたことに気付かない。
「さぁ、そんなことより今夜はもう疲れただろ?まだ早いけどそろそろ休んだら?」
 スザクは慣れた手つきでルルーシュの体についた精液をふき取ると、そこらに脱ぎ捨ててあった部屋義を拾ってきて、ルルーシュへと着せ始める。
 動くのがまだ大儀そうな様子に加え、俄に表情も暗くなってしまったルルーシュは、静にされるがままにしていた。
「…本当にまだ早い。スザク、今日は泊まっていけるんだろ?だったらもうちょっと…その…話でもしないか?」
 ルルーシュはほんの少しだけ期待をこめた瞳で、自分のことを甲斐甲斐しく世話する友人を見つめた。しかし、その視線は届くことなく、細められた笑顔の目に跳ね返される。
「何言ってるんだい?そんな疲れた顔で。…明日も学校あるんだし、もう今日は寝た方がいい」
 疲れた顔と言われて、ルルーシュは自重的な笑みを零した。それの原因が何を言うと、舌の根まで出かけた言葉を飲み込むと、嫌に苦い味がする。
そんなルルーシュの苦笑を肯定と捉えたスザクは、さっさとルルーシュを布団の中へと押しやってしまった。
「僕ももう寝るよ。きみの隣りで寝てもいいよね?」
「…あぁ。夜中にトイレに立って起こすかも知れないが」
「いいよ、別に。目が覚めたら僕も一緒に付き合うから」
 スザクの屈託ない発言に、ルルーシュは困ったような笑みを深める。
「…なぁ、スザク。本当に眠たくないんだ…だから…」
「…眠れないのなら…」
 ベットに押さえつけるように抱きしめられて、ルルーシュは少し窮屈そうに身じろぎをしながら遠慮がちにそう言った。
 スザクはしかし、ルルーシュの言葉を終わらないうちに、ゆっくりとその華奢な背中を一定リズムで優しく叩き始める。それは、母親が子どもを寝かしつけるときにするような、安らぎを誘う動作のはずだった。
「眠れないのなら、睡眠薬でも飲むかい?ルルーシュ?」
 スザクは、声に何の感情も込めずにそう言って、笑った。
 ルルーシュは、一瞬驚いたような、傷ついたような顔をして、そうしてやっと、小さく首を左右に振った。